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あなたに星が見えるまで −間奏−

Tiana −ティアナ−

 

 わたしと双子の姉のタリヤには、ステップブラザーがいる。
 パパと再婚したキヨミの息子で、今はアーバナ・シャンペインの寮で暮らしている大学生。
 日本人の両親の間に生まれた彼は、ウェールズ人の血を引くわたしたちとは髪も肌も瞳も色が違う。
 いつもわたしたちの瞳のことを、空の色よりきれいだってほめてくれる。
 でも、夜の森みたいに密やかでミステリアスな彼の瞳だって、すごく魅力的。

 

 わたしたち3人はすごく仲がいい。
 わたしとタリヤがまだずうっと小さな頃から一緒に育ったの。でもケンカなんかしたことない。
 休みの日にダウンタウンへ出かける時は、ミシガンアベニューで買い物するのも、シェド水族館へ行くのも、映画を見るのも一緒。
 わたしたちが出るソフトボールの試合には、いつもパパとどっちが早く駆けつけられるか競ってくれる。
 眠る前に読む絵本は、誰よりも上手に読み聞かせてくれるし。
 クラスのどの子に聞いても、わたしたち以上に仲のいい兄妹なんかいない。

 

 彼はわたしとタリヤの自慢のステップブラザーだ。
 飛び級してあのイリノイ大学に入れちゃうくらい成績良くて、先生だって喋れないような外国語もペラペラだし。
 リトルリーグで一番人気のスティーブンより、ずっとかっこよくて頼りになる。
 それに、ハーシーズのミルクチョコレートよりも甘くて、とびきり優しいの。
 そんな彼のこと、
『私の息子はとびきりの“遺伝子”を持ってるのよ』
 ってキヨミは言う。
 ……ふふ、おかしくて笑っちゃう。
 だって。
 それが、彼の名前なんだもの。

 

『ただいま。俺の大切な双子たち――』
 週末に帰ってくると、彼はわたしたちのことをそう呼んで抱きしめ、髪にキスを落とす。
 パパも同じことをしてくれるけど、彼のほうがずっと繊細。
 ちゃんと、壊れ物みたいに扱ってくれる。
 そう言うとパパの機嫌が悪くなるから、これはわたしとタリヤだけの秘密だけど。
 ……でも、10歳も年上の大学生は悲しいくらいオトナだわ。
 だって同じキャンパスにガールフレンドがいるんだもの。
 このあいだ連れてきたのは、やっぱりオトナの女の人。
 長いブルネットの髪がくるくるで。お花の匂いがした。
 だけどね。
 彼女、わたしと話す時に膝をまげてちょっとかがんだのよ?
 ……子ども扱いされるのは大キライ。
 だから、クリスマスの休暇に帰ってきた時、彼女とはうまくいかなくなったって聞いてほっとした。
 おかげで休みの間中、わたしとタリヤは彼と一緒にいられたし。
 わたしが彼の年になったらきっと、あんなオンナなんかよりもっとずうっとキュートになってみせる。
 上手にお化粧して、パーリィなマニュキュアとお花の匂いの香水が似合う、オトナの女に。
 ぜったいぜったい、なってみせる。
 そしたら彼は、何て言うかしら……?

 

 “遺伝子 -Gene- ”という名前を持った、とびきりの彼。
 これからも、ずっとずうっと、永遠に。
 わたしの自慢のステップブラザー。

 

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≪管理人のつぶやき≫
かなり偏った双子ビジョンでお送りしてます(笑)。アメリカの女の子ってほんと、おしゃまで可愛い♪
これだけ年下だと、にーちゃんとしてはさすがにケンカはできないよね。
ステップブラザー(stepbrother)は、親の再婚でできた兄弟のことデス。